そもそもが、ゴルフコースの芝生というのは、基本的には耕すことが出来ない場所ですので、物理的に根が伸びたり、水はけが良くなるような条件を整えてやるためには、穴をあけたり切り込みを入れたりする、いわゆる”更新作業”と云う行為を行います。
この更新作業という作業――――――――
以前は業界筋でも”コアリング*1”から、ムク刃*2での”エアレーション*3”までをひっくるめて”穴あけ”なんて云い方をしたりしていました。


そのでん、、で、作業自体の名称が、何となくイメージとか雰囲気で語られていて、統一されていないような気がしますが、まぁ、ここでそんなことを語っていると、先に進めませんので、話を”バーチカルカット”に限定しましょうか。






そもそも”バーチカルカット”というのは――――――――
という話なんですが、まぁ、”バーチカル”に”カット”するのではないのかと、sibakuro思っていました。
”バーチカル”ってのは、”平行する”みたいな意味だろ、
って。ところが、この稿を起こすに当たって検索したら、”平行”=”parallel ”でした(恥


さぁ、そこから検索大会。
その結果、”バーチカル”=”vertical.”=”垂直(に)”という意味だと知れまして、いやこの歳で、又一つ利口になれました(嬉
で、とりあえず、”バーチカルカット”というのは、”芝地を垂直に切る作業”だ、と。
で、効率を考えて、手裏剣状の刃を”平行に”何十枚も並べて動力を遣って一気に切り込むわけですね。





【これが、sibakuroが処の”バーチカルカッターの刃”。芝や砂を凄まじい回転で切っていきますが、刃先がタングステンチップで、ぜぇんぜん擦り減りません。まじでびっくりです】





(4/29追記)



【いや、減らないなぁぁ、なんて感心していた”タングステンチップの刃”なんですが、写真がGゴルフ倶楽部のパッティンググリーン二十一面に20ミリの深度で施工を終えた状態です。
二回施工したホールが二面ですから、延べ15,000㎡強を施工して、ご覧の通りです。
さしものタングステンも角が丸まっていますし、ブレードの後ろが磨かれて薄くなっているのがお判りいただけますでしょうか。
さらに、虫食い状に食い込んでいる部分は、摩滅、、した部分です。
ついでに、何処かにぶつけたのか、摩滅が進んだのか。端の刃はチップが三つほど飛びました。この後Bゴルフ倶楽部の二十面10,000㎡を施工したら、
――――――――おまけに、、一つでも多くWで掛けてやろうなんて話をしていますので、
多分施工が終わった段階で、もう使い物にはならないでしょうね。
確かこの刃って、消耗品と一口に云えないくらい単価がのしているはずです(泣笑】





でもね、”垂直に芝地を切る”のであれば、コアリング用の機械にスライス刃*4をつけても”バーチカルカット”では・・・・・・
なんて無駄話は、無しにしておいて――――――――


でもね、グリーンモア*5の”グルーミングリール”とか”サッチングリール”も、”バーチカルカット”ですわね(笑





【グリーンモアの”グルーミングリール”とか”サッチングリール”】
 




実際に、現場でバーチカルカットを初めて見た若手で、以前施工したサッチングのことを覚えている連中は、
「サッチングとバーチカルカットの違いはなんぞや」
という疑問を持ってくれます。






正確に言うとサッチングというのは、”デサッチング”と云う筈で、
――――――――デカルチャーではない(笑
”サッチを除去する作業”位の意味の筈です。
――――――――そのあたりを説明していると、またまた長くなりますので、興味があれば【こちら】をご覧下さい。
でも、”バーチカルカット”は、”垂直に切ること”。
これって比較の対象になるのかな、と云うことも、まぁこの際だから、おいときましょう(笑


兎にも角にも、”バーチカルカット”の目的も、”サッチの除去・密生した芝の間引き・芝目の矯正”などと一般には云われているようですから、ね。
どっちも一緒だろ、と云うことになりかねません。
まぁ、サッチングよりバーチの方が深く切るんだぁ、
なんて、実際そのあたりを感覚的に捉えて、何となく納得してしまう若手と、「今ひとつよく判らん」と云う顔になる若手と――――――――
まぁ、どちらも、作業の内容に興味があるだけ有り難いんですがね(笑
そのあたりを、もう少し上手く説明してやるには、まず自分なりに整理せねば・・・・・・、と云うのが、この稿の目的でもあります。






丁度この稿の支度を始めた頃合い、Shootさん主宰の【芝生の掲示板】と云うサイトは”雑談スレッド”の318のレスから非常に面白いやりとりが始まっていまして、sibakuroも興味深く読ませていただいたんですが、結局、サッチングとバーチカルカットの明確な境界線は、無いのではないかと思います。
たとえば、グルーミングリールを低くしてゆくとサッチングリールと同様の効果が望めますし、もっと深くすれば、バーチカルカットと同様の――――――――
もっとも、回転する刃が深くはいるほど、刃と刃の間隔を広くしないと”更新作業”ではなく、”破壊行為”になってしまいますからね。ものには限度があります(笑


で、sibakuro風に考えれば、

  • グルーミング : 芝目・寝ている葉の矯正
  • サッチング : 芝目・寝ている葉の矯正 上層*6のサッチ除去
  • バーチカルカット : 中層まで*7のサッチ除去 発根効果 とりあえずの透水性の向上

なんて感じでしょうか。



 

【二つに割るときに、みしみし、、、、と音がしたり、根のちぎれるような手応えがあったりします】


実際、バーチカルカット施工後、十二・三日で上の写真のような細く白い根がわんわん、、、、と生えてきますし、水はけもしばらくは改善されます。





【バーチカルカットの後の散水。奥の方のプラクティスグリーンには、薄く目土をしてあります。同時に散水を初めて十五分後、”バーチ”施工後は、排水が良くなっているように見られます】






で――――――――
能書きはその位にしまして、実際の作業風景のご紹介を。


グルーミングやサッチングと違い、地際から20ミリ30ミリの深さに切り込んで、芝と床土(砂)を掻き出す作業ですから、機械にも馬力が必要です。
ユニットをトラクターに付けて作業します。





【こんな感じ】
        



【”バーチカルカッター”で掻き出した砂と芝の滓で、芝が見えないくらい・・・・・・。これで施工深度20ミリ。1トンダンプにほぼ一杯になるくらいの砂と芝の滓が出てきます】

【パッティンググリーン一面、深さ20ミリの施工で、1トンダンプにこの位の砂と芝の滓が出てきます。ちなみにこれ、500㎡分。本当は、もっと出したい(笑 】
              






で、スイーパーという、巨大な乗用の掃除機で、砂と芝の滓を一気に吸い取って、





【お天気が良くて、スィーパー*8のブラシのセッティングが出せていると、この位綺麗に吸い取りますが、お天気が悪かったり、セッティングがでていないと悲惨な目に会う事になります】


”リール”と呼ばれる円筒形の回転刃の代わりにブラシを付けた改造グリーンモアで、掃除をして、





【グリーンモアのリール刃をブラシのユニットに交換したもの】


グルーミングをしながら刈り込んで、”一丁あがり”です。






まぁ、条件次第なんですが――――――――
700㎡くらいのパッティンググリーンで、大体二時間凸凹の工程ですね。
途中で雨が降ったりすると悲惨を極めますし、大体仕上がりが汚くっていけません。
――――――――そう云う意味からも、やっぱり我々お天気商売だなぁと、しみじみ実感しちゃうわけです。
とにかく手間も時間もかかりますし、プレーヤーがいたらまず作業できません。
面倒で、苛々して、出来ればやりたくない作業です
ただし、発根効果は抜群ですし、根が動けば表面の出来も明らかに変わってくるのが芝生の性ですので、
もうこりゃぁ、〔春の定番〕にしてぇなぁ・・・・・・
なんて、sibakuro舌なめずりをしちゃうわけです。






キーパーに成り立ての頃、一念発起してレンタルしたバーチカルカッターが不調で断念して一ヶ月後――――――――
見事に仕上がった、テスト場となったプラクティスグリーンの記憶が残っていたsibakuro。
arakenさん主宰の【芝生の管理人】と云うサイトに掲載されたバーチカルカットの更新率の記事などを読ませていただくにつれ、
バーチ掛けてぇなぁ・・・・・・
なんて溜息をついていたんですがね、まぁ、今回某社を脅迫して、
――――――――キャンペーン価格を期間外で無理矢理適用してもらっただけですが(笑
会社を騙して、
――――――――勝手に発注掛けて、納品間際に稟議書を提出して「もう、もの、、が着いちゃうんです」って泣きついてみただけなんですが(笑
買ってもらったバーチカルカッター。


こいつは使えるぜ【^¬^】って、ご機嫌です。






そうそう。ちなみに、ダブルで掛けると、さらに効果が高まること請け合いです。















(4/27追記)


本当は、こんな事をしていてはいけない、と云うか、していられるはずのない状況ですが、ちょっとだけ(笑
Shootさん主宰の【芝生の掲示板】と云うサイトは”雑談スレッド”への書き込みの補足というか、落ち穂拾いを、少々――――――――







繰り返しますが”バーチカルカット”と云う作業自体が、”垂直方向(縦)且つ、水平(平行線状)に”切る作業です。
それをあれこれ、、、、と細分化しようとすると、結局ただの言葉あそびになりますので、まぁそれはそれで良いんですが、そう云う括り方をしたがために、今度はいろいろな目的を持って作られた製品が、結局”バーチカルカット”とか”バーチカルカッター”と呼ばれることになってしまいます。
わざとらしく商品名は控えますが、【こちら①】【こちら②】をご覧になっていただけるとよく判るかと思うのですが、同じ”バーチカルカット”でもいろいろな製品があります。
――――――――ちなみに、今回ご紹介の製品は、写真付きのサイトが見つかりません。メーカーさんと販売店さんに猛省をうながs(ry


で、たとえば、まぁ作業の形態によるんですが――――――――
”進行方向に回転する車輪と同じ方向に、作業刃の回転がシンクロした状態で施工する”
場合、作業刃の形状にもよりますが、砂も滓もほとんど出無い場合があります。
ところが、sibakuroが処のバーチカルカッターは、
”進行方向に回転する車輪と逆方向に、しかも動力を用いて強制的に高速回転をさせて施工しますので”、
ご覧頂いたような大騒ぎになります(笑


さて、ここで、一体どちらがより有効であるか、と云う議論は、余り意味がないかと思います。
そもそもの目的が違うものを、比較しても仕方がありません。
たとえば、上記の作業のどちらを選ぶかは、芝の状態によりけりではないでしょうか。
――――――――それよりも、手持ちの機械で何とかせざるを得ないのが現状ですが(笑
サッチもない。芽数も必要なだけ有って表面も整っている状態では、わざわざ床土や表面を攪乱するような作業は必要ないのかも知れません。
いずれにしろ、管理者が判断することかと思います。


で、sibakuroが処は、床土のそれも上層に問題がありそうだと云うことで、今回の機種の選択と、施工と相成ったわけです。
以前某社の”スリッター”*9と呼ばれる機械のでもをやってもらったことがあります。
早くて、綺麗。
これはこれで、いいなぁ・・・・・・
と、垂涎の的ではありましたが、当時は、いろいろな制約があって、
――――――――はっきり云って、お金がなかった(笑 今はもっと無いけど(泣笑
購入には至らなかったんですがね。
今でも、欲しいには欲しい機械です。ただ、優先順位がまだそんなに高くないだけ(強がり






さてさて、今回ご紹介の機械、ちなみに刃の厚み、1ミリです。
2ミリのものもあるそうですが、1グリーンですから1ミリで充分です。
間違って刃が同方向に二回はいると悲惨なことになります。





【ダブっちゃった痕。まぁ、2ミリ厚でもここまではひどくないとは思いますが・・・・・・】


2グリーンであれば目土をして休ませてやれば良いんでしょうが、こちらはB――――G――――も1グリーン。
おまけに、1ミリ厚の刃でも、ご紹介の通りの大騒ぎですので、sibakuroが処では1ミリで充分なようです。
又、作業方向を変えて二回掛けるとなお効果的ですが、2ミリ厚の刃で二回掛けたらどうなるのかと思うと、とても恐ろしくて施工できません(笑





【ダブルで掛けた痕】


そう考えると、1グリーンで営業に提供しながら施工せざるをえない場合は、1ミリ厚の刃で二回掛けがベストかも知れませんが、今期そこまで時間と手間が裂けませんので、状態の悪いホールのみとしています。
本当は、全面ダブルでやりたい処なんですが、まぁ仕方がないかな、と。
その代わり、梅雨明け時期とか、お盆明けの時期の試験施工も・・・・・・、
なんてぇ事も考えています。





*1:「コア」=タバコ状の土と芝の固まりを抜き取る穴開け作業

*2:棒状の刃。断面が丸であったり十字であったり

*3:この場合は「コア」=タバコ状の土と芝の固まりを抜かない穴開け作業

*4:剣の先のような形で、芝生に突き込んで切れ目を入れる刃

*5:パッティンググリーン用の芝刈り機

*6:地際から数ミリの深さ

*7:地際から、20〜30ミリの深さ

*8:写真にあるような乗用の巨大掃除機

*9:手裏剣状の刃で切り込みを入れる作業機。滓も砂もほとんどでない上、、作業後がほとんど目立たない