36-2 『指圧だって壺を狙うんだから 穴開けだって』って......




sibafunokuroko's website仰峰閑話second season

グリーンキーパーの野帳付録spin off



36-2.『指圧だって壺を狙うんだから 穴開けだって壺を心得ていないと』ってことらしいのですが............






《前回を御覧でない方はこちらから............》
「最終追いかけながらカップ切って、頃合い見計らって合流ってさぁ......頃合い見てケータイで呼んでくれればいいのに(グチグチ 」





あらぁ〜 退屈しすぎて寝ちゃったのね(笑
「おっ、やってるな」




って、来ちゃったよ。
sibatamiこの小父さん苦手なんだよなぁ.........
パッティンググリーンで ホールカップの切り替えをしているところにやってきたのは ここんち、、、、のコース委員長さんだった。
この小父さん、何とか云う大きな会社の相当に偉い人らしかったが、何かって云うと俺達をとっつかまえては『お前ら、支配人やキーパーに遠慮しないで、もっとツルツルトロトロの早いグリーン作れよ』って講釈が始まっちまう 俺達にすればただのウザイ小父さん、と云うだけの存在でしかなかった。
このコース委員長ツルトロさんのことをsibakuroに言わせれば『あの人ツルトロさんは「グリーンはより早きのより尊き ハンディはより少なきのより貴し」の バキバキのゴルフ原理主義者』の小父さんだったのだが、そう言って嗤うsibakuroに なお言わせれば、
『無理筋だろうが クレームだろうが いちゃもんだろうが、それでもコースに通って声を掛けてくれるメンバーは まだ味方の口。黙ぁって来なくなっちゃうメンバーの方が余程に怖い』
なんだそうだがねぇ............




「そう云うことはキーパーに言って下さいよ・・・・・・」
まだ先代まえのキーパーの頃、相変わらず『ツルツルトロトロ』を繰り返す コース委員長ツルツルトロトロさんに 思い切ってそう言った俺に、小父さん莞爾と笑ってこう言った。
「あのキーパーにはその気がないから駄目だよぉ。あのね、ここだけの話だよ。あいつの仕事は キーパーの楽しいところや美味しいところ 格好良いところだけ喰っていられればそれで良い。自分のコースなんか芝があればそれで良い、ってだけの仕事なんだ。サブの時にはキーパーの美味しいところ格好の良いところが羨ましくて、しんどいところやきついところは それはキーパーの仕事で自分はサブだからって目を逸らしていて。さぁ いざ自分がキーパーにして貰ってみたら、今度はその責任やら義務のあんまりに 溜め息と嘆き節の毎日なんだろ。見てみろ『折角楽しくやっていたのに キーパーなんか押し付けられて・・・・・・』って愚痴が見て取れるじゃない。そのくせ ちゃっかり美味しいところや格好の良いところだけは我がものにしちゃっているだろ。あれはなぁ『楽しければそれで良い』程度の甘ちゃんをキーパーにしちまった顧問コワモテさんの人選ミスだな。・・・・・・なぁ、俺が支配人に言ってやるから sibatamiがキーパーやんなよ。で さぁ、もっとツルツルトロトロのグリーン作ってくれよぉ」
......って、いや まったく無茶苦茶ばかり言ってる小父さんだった。




バーチカルカットってこんな風に切れるんだな  「どうせ機械も 刃も新品なんだろうし」「こう云うのって良いところしか見せないよね」「もしかして 画像ソフトで弄ってない?」  うるせぇ〜よ 少しは素直に驚いて見せたって良いだろうによ............
......で、コース委員長ツルトロさんの話だった。
「へぇ、そうやって根っ子の長さとかも見るものなんだ」
「まぁ、根っ子の量とか長さとか 太さとか色とかね。こう云う細かぁい根毛なんかの様子も見ますけれどね・・・・・・」
「・・・・・・ふぅん」
って カップを切る俺の手元を覗き込みながら小父ツルトロさん、いつものツルツルトロトロの講釈が始まらないじゃん、
「なぁ、今度のキーパーsibakuroはどうだい?」
って、そう来るのかよ。『ツルツルトロトロ』で先代まえのキーパーが厭気さすまで追い詰めたのは あんただよねぇ。まぁ、その伝で今度のキーパーsibakuroもやっつけちゃってくれるのかな、
「う〜ん、まだここんち、、、、に来て四月よつきですからねぇ・・・・・・」
なんてお茶を濁した俺に.........
「まぁ、あれsibakuroは その辺のコースのお上品で行儀の良いキーパーとは一味も二味も違うからな。君たちみたいな平場でやってきた今時の若い人たちには ちょっとやそっとじゃぁ馴染めないかも知れないなぁ」
さもあの壊れかけsibakuroのことを知っている様な口ぶりのコース委員長ツルトロさん、にんまり笑うと あとはパターの練習ですか。なんだかいつもと違うじゃん............




『アウトイン 頭の方だけカップ切ったら 頃合い計って“おまけ”の一番に合流な・・・・・・』
〔午後の段取り〕でキーパーsibakuroにはそう云われていた。
今日の午後から“おまけ”のグリーンからバーチカルカットを掛けるから、アウトインと“おまけ”併せて二十七ホール終わるまで暫く残業続くからそのつもりで・・・・・・ついでに言うと 直に秋の二回目のラージだから、段取り捲くってかかるからね、
なんて それこそ迷惑なおまけ、、、のついた〔午後の段取り〕だった。




とまれ、それなりの数のカップを切って それなりの時間で戻らないとsibakuroに何を言われるか判らなかった。
乗り慣れているからこそ まともに走らせられる様な、それでもsibakuro同様に壊れかけ、、、、の“屑屋跨ぎsibakuroのカブ”よりは余程にましなカブで、人気のない“おまけ”を逆走していた時だった。
なんだかsibatamiは、妙な、何とも云えない違和感を感じていた。
“おまけ”の景色が何となく違うような.........
そう云えば嫌たらしい梅雨時の枝打ちと云い メンバーさんに大不評のバンカーのエッジ切りと云い、今までにやったことのない仕事は みんな“おまけ”の九ホールからだった。
『点を繋いで線にして、線を繋いで面にする。面と面を合わせて区域を作っていくんだ。ひとつひとつの仕事が ジグソーパズルのピースみたいなものなんだ・・・・・・』
sibakuroが言った ジグソーパズルのピースの様な仕事が嵌り始めたコースの、sibakuroの云いたかったであろう変貌の嚆矢が、確かに“おまけ”の端端に垣間見られる様になっているのを、
あそこもやった、ここもやった・・・・・・
逐一の仕事を思い出しながら、その結果として見えている景色というものを 認めざるを得ないsibatamiだった




バーチの後って こんな風に根っ子出るんだ・・・・・・ 「写真小さいし」「根 細いし」「前後の施肥のデーターとか非公開だし」 もういいよ(泣
現場に着けば sibakuro機械の担当ゴコサンと一緒にバーチカルカッターの調整をしているところだった。
「ここに来る前にパッテンパッティンググリーンコース委員長ツルトロさんに遭いましたよ」
そう言ったsibatamiに、
「へっへっへっ、コース委員長ツルトロの小父さん クラチャンだからツルツルトロトロの早いグリーンつくれとか言ってなかったかえ」
sibakuroは へらへらと笑いながら言った。
「いやぁ、sibatamiカップ切るのを覗き込んであれこれ聞いてきただけですけど・・・・・・」
「へぇ・・・・・・」
何の興味もなさそうなsibakuroの 空気の漏れたような相槌に、sibatamiはその後の話をする気になれなかった。
「実はあの人さぁ、普段の『ツルツルトロトロ』が突出しているから とんでもない我が儘な人みたいに見えるけど、本当はコース委員としてかなりまともな人なんだよな。コースの何処か改造いじっていても『この辺りは俺の球が落ちる距離だから平らにしろ』とか 『このバンカーにはいつも捕まるから なくしちまえ』とか言わないもんね。改造の意図とかきもの部分を確認して 自分なりに納得できれば後は黙って様子見ていてくれるしな。昔 一山そっくり大伐採掛けて 大土量 動かした時にも、他の競技委員やコース委員がなんだかんだ口挟んできたけど、あの小父さんは『こんなに木を伐られたら このホールの風の流れが変わっちゃうなぁ。俺 いい加減年だからパワーフェードなんか打てないぞ』って笑っていただけだったしなぁ。お前らだってあの人に『フェアウエイのあの辺は俺の球が落ちるからもっと広く刈り込め』とか云われたことないだろ。ありゃぁとことんゴルフが好きなんだな。本当のゴルキチって ああ云う人かも知れねぇなぁ。純粋にゴルフが好きだから グリーンは早くなくちゃぁいけないって『ツルツルトロトロ』やってるんだな」
......って、この人sibakuroってば コース委員長ツルトロさんと知り合いだったのか、
さっきのコース委員長ツルトロの 思わせぶりな言葉を思い出しては、なんだか首筋のぞくぞくしていたsibatamiだった............








2009.10月号 36.かちかち山の狸sibafunokurokoは 不渡りに眠れぬ夜を過ごすか より付録の二つ目です

ええぇと、なんだか現場の話をあれこれ書いてますが ご承知の通り ファンタジーですからね(笑

謂わば 後出しじゃんけんで話を進めていますから、あんまり目くじらたてないで、間違っても眼光紙背の愚を犯すことなく、上っ面だけをのんびりと お読み下ださいますよう......なんだしこっちは 予てご承知の如くに うに酔眼朦朧であったりもしますから(苦笑