35-4.『雨だって降ってくれなきゃぁ困るだろ』ってねぇ............


sibafunokuroko's website仰峰閑話second season
グリーンキーパーの野帳付録spin off



《前回を御覧でない方はこちらから............》
ちょっと 良いですか?  「忙しいんだから 付き合っていられませぇ〜ん」   つれないこというなよぉ〜





『 いやぁ 走ったなぁ 』 後はご飯だけかえ? 『 よくご存じで(笑 』
「sibakuroさんねぇ、あの人ぁひたぁねぇ・・・・・・」




sibakuroが前にグリーンキーパーをしていたコースでも付き合いのあったと云う その肥料や農薬を取り扱っている業者さんは、これまた何とも云い様のない微妙な笑顔を浮かべて言った。




先代まえのキーパーの時からもここんち、、、、に来ていたその業者さんは その頃はそれなりに売上もあった様だが、代が代わってsibakuroがキーパーになってからは 来るたんび sibakuroの玩具にされているような有様で、しかし何ら懲りる風も無しに罵られ虚仮にされ 無駄足を踏まされに通って来ていた。
キーパーibakuroが単肥を好きな理由? ......そりゃぁあの人が とことん名うての吝腐けちくされだからでしょ」
業者さん そう言っては啞啞と笑っていた――――――――





「・・・・・・まぁ 実際ね、単肥とか 一般作物用の肥料とか鶏糞の類使うと、かなり肥料代も安くあがるじゃない。おまけにあの人sibakuro 浸透剤や保水剤とか使わないでしょう。『そんな小難しい能書きが先に立った胡散臭いケミカルに注ぎ込める金なんかありゃしねぇ』とか言ってない? 土改剤だって 有機系のお気に入りを使うだけで 他のものには目もくれないしねぇ。前のコースでも 俺達出入りは あの人sibakuroにそう云うものを売るの諦めてたもんね・・・・・・」




――――――――それは昨日の夕方のこと
『しまった、直に新月だってのに殺虫剤が足りないじゃん』
例に依ってコースうちの“芝生のカルトsibafunokuroko”は訳の分からないことを口走りながらどこかに電話をしていた。
そうして キーパーsibakuroに『ぞうさんみたいな大至急で』なんて無理を言われた件の業者さんは、近所のコースから借りてきた殺虫剤 一ケースをわざわざ翌日の朝一で届けに来てくれていた。
俺はカップの切り替えを終えて丁度上がってきたところで、そこで “屑屋跨ぎsibakuroのカブ”で出かけたきりのsibakuroを待っている間の無駄話だった............




「まぁ あの人sibakuro吝ん坊しわんぼうだってのは、何とかあの手この手でお金を工面して薬を買ったり 道具を買ったりしたいってのが本音なんだよね。もともと『コースで稼いでいるものを コースに金をかけないでどうするんだ』って言って憚らない人だし。『コース課コース手下てか素手で喧嘩させているようじゃぁキーパーも下下の下の下だ』とかね『趣味道楽で芝やってるんじゃぁねぇんだから 金の注ぎ込み処を間違いなく差配するのもキーパーの仕事』とか・・・・・・」
って、まぁ要するにsibakuroはどこにいても言いたい放題なわけだよね。
あの人sibakuroって、昔からああ、、だったんですか?」
何気なくそう聞いたsibatamiに、業者さん にったり笑いやがった。
「いやぁ 昔はもう生意気で生意気で・・・・・・」
「今だって 充分夜郎自大ずんべらぼう野放図ぞろっぺぇじゃぁないですか」
「いやいや、今の方が言ってることもやっていることも まだましなんだからさぁ・・・・・・まぁ多分ねぇ、あの人sibakuroなんかが 戦後のグリーンキーパーの流れの、きっと最後の世代なんだろうなぁ。ああ云う 古いタイプのキーパーは あの人sibakuroなんかの年代で絶えちゃうんだろうなぁ。まぁ それはそれで良いんだろうけど・・・・・・」
その『古いタイプのキーパー』と云うのがsibatamiには良く分からなかった。
果たしてグリーンキーパーに 絶滅危惧種レッドデーターがあるのかどうか知らん.........ともかく業者さんの慨嘆は本物のようだった。
「まぁ 今時の若い人は、きっとあんな風にしなくても良いんですよ」
そう言う業者さんは どこか寂しそうでもあった――――――――




ちょっと良いですかぁ?  「だからあなたみたいに暇でないよ」  な 何でそんなに忙しそうなんだか(汗
「そう云えばねぇ、先代まえのキーパーは 浸透剤とか保水剤使いまくってましたけどねぇ。次から次へと新しいのだ 成分を強化したのだって売りつけていましたよねぇ」
そう云ったsibatamiに 業者さんは笑いながら言った。
「へっへっへっ。あの頃は大分儲けさせて貰ったけど、最近はさっばりだ。あっはっはぁ。・・・・・・まぁ どうせあの人sibakuroのことだから『月一つきいちで穴空けて 一時間水撒けるようにしておけば、ケミカルなんか必要ねぇ』って言ってるんでしょ」
「言ってます言ってます」
「だから俺達出入りは 参考までにってパンフは持ってくるけど、はなから売るつもり無いもんね」
「浸透剤や保水剤撒いて スプリンクラーのタイマーかけて・・・・・・ってのが先代まえのキーパーのやり方でしたよねぇ」
「まぁ それが今風なのかもねぇ。そう云えば 今年のこの夏のお天気じゃぁそう云う段取りにならないのかなぁ・・・・・・気の利いた若い衆わかいし一人か二人に『一日いちんち無駄足で構わないから ホース担いでコースぁ ぐるぐる冷やかしといで・・・・・・』ってのがあの人sibakuroの夏場の水まきの段取りなんだ。スプリンクラーやタイマーは手散水の補助で、下地を作るだけのものなんだって。後は乾きそうなところにとことん手散水。『芝ぁ やるのに、楽もしんどいも 格好良いも格好悪いも 綺麗も汚いもねぇや。ただただ預かったコースを疵物にしないように働かすのがキーパーの仕事なんだから』って 年中言ってたもんねぇ」
「そう云うのを我が儘とか横暴とか言いませんか?」
「確かにそうかもしれないけどね。その代わり 言ってる本人も、お天気がいきなり良くなれば あの屑屋お払いみたいなバイクでコース廻ってホース担いだ若い衆わかいしにケータイで指示入れまくるし。必要があれば自分で夜中までスプリンクラー回して歩くし。猪が入れば夜回りで 二晩三晩平気で泊まり込むし。前にいたコースで 何年か前の台風で何十カ所も崩れた時は 丸二月たつき出ずっぱりで災害復旧やってたし・・・・・・そう云えばその頃は一年で朝からコースに出てこない まともな休みが十日あるかないかだったりしてさぁ。まぁ、そうやって グリーンキーパーってコースが棲家みたいな暮らしになっちゃうんだなぁ」
「ぅわぁ そんなの嫌だなぁ。そんなんじゃぁsibatami キーパーなんかやりたくねぇっす」
「前のコースの若い衆わかいしは、グリーンキーパーを貧乏くじとか ばば、、 とか呼んでたし」
「なんだか言い得て妙だなぁ・・・・・・」
「それをまたあの人sibakuroは『ばば、、が二枚混ざったババ抜きで ばば、、二枚揃えても捨てられない面白さ』って笑ってたな・・・・・・」
って、一体どう云う神経なんだか............




.........と、あっちからよろよろ、、、、と走ってくるのは sibakuroと“屑屋跨ぎsibakuroのカブ”だった。
エンジンのノイズがこの距離から聞こえるってのは これは尋常一様じゃぁないだろ.........ってか、それはもしかして奴等sibakuroとカブの断末魔かもしれなかった(笑
「駄目だよsibatamiさん、あの人sibakuroに 俺がこんな話してましたなんて言ったら」
「言わない言わない。言うもんじゃぁありません・・・・・・」




「あっ、キーパーsibakuroぞうさんの大至急”の殺虫剤持ってきましたよ」
「おおぉ、悪いねぇ。ぞうさん印の宅配便は流石に早いなぁ。儲けのない 殺虫剤のサンプル 一ケースをこんなに早くに持ってきてくれるなんて、良縁に結ばれた業者さんは ありがたいありがたい」
「ちょっ、ちょっと待って。ちょっと待って。誰もサンプルだなんて聞いていませんよ・・・・・・」
「良いじゃん、一ケースくらい メーカーに泣いてもらえよ」
「だめ、駄目だってば駄目駄目だめだめだめだめだめだめ・・・・・・」
「けちなこと言うなよぉ」
「いやあぁたsibakuroけち、、 言われたくありませんて」
「あんまり吝いこと言ってると 蔬菜四十号のこと、近所のキーパーにばらしちゃうよ」
「駄目、それだけは駄目駄目駄目駄目・・・・・・・・・・・・」
「じゃぁサンプル決まりな」
「だぁ〜め。そっちも駄目駄目」
「なんだよぉ、究極の選択だってばぁ」
「だから何でわざわざ苦労して殺虫剤持ってきて 虐められなきゃぁならないんだか・・・・・・」
「さぁ、サンプルにするか 蔬菜四十号をばらされるのか、究極の選択よね。どっちにするぅ?うふふふふふぅ?」
「あっ、それ駅前の歯医者さんでしょ・・・・・・・・・・・・」
「そうそう、あの良い感じの年増のな」
「あの歯医者さん良いすよねぇ、ああ云う女医さんなら口の中何されても良いや」
「だろ、だろっ。そう思うよなっ」
って なぜか年増の歯医者さん談義になっちゃってるし............




............なんだかこの小父さん達の関係と云うのも sibatamiには良く分からなかった。
もしかして コースの仕事というのは、こんな風に人を妙な方に傾けてしまうものなのかしらん。
俺の胸に湧き上がった不安の、一抹ならぬ なんてもんじゃぁなかったんだが............
「おぉーい、民公sibatamiお前sibatamiそこで知らんぷりしながら聞き耳立ててないでこっちにおいで。丁度お前さんsibatami好みの年増の歯医者さんがなぁ・・・・・・」
「なぁんだ、sibatamiさんも同好の士だったのかぁ、いやぁ嬉しいなぁ・・・・・・」
このまま俺はこのコースにいて良いんだろうか.........ってか、その歯医者さんて そんなに良い年増なのか?




そのsibatamiの腹を見透かした様に sibakuroは笑った。
民公sibatamiやぃ、どうだえ お前さんも虫歯になってみないかえ・・・・・・・・・・・・」




この項 さらに続く............ 




ちょっと間が空きましたが、2009.9月号 35.虫歯をつつけば君子のずるから 付録おまけの四つ目

本誌マネジメント一話につき 週一くらいで 月に三本くらいのペースを考えていたんですけどねぇ。済みません下らない話がまだ続きます(苦笑

蔬菜そさい四十号”と云うのは『蔬菜用の液肥のラベルだけ張り変えて芝用を名乗って倍掛けで売りつけようとしたものの、あんまり出来の良すぎるパンフレットは、わたしsibakuroなんかから云わせれば、はなから蔬菜用ですとばらしている様なもんじゃぁないかと(笑) で、わたしsibakuro如きに見破られちゃったは笑い話で良しとしても、うまうまと騙されて買わされちゃった余所よそのキーパーにばれると出入り禁止になっちゃうから 業者さんが口止め料で 泣く泣く定価の四十パーセントで納めている液肥のこと。それをまともに云うと寿限無みたいになっちゃうから、みんなで“蔬菜そさい四十号”って呼んでる』.........と云うものなんですが、実は 相当部分が実話であったりもします(微苦笑............