35-3.『吹く風は何時も向かい風だと思えば良いんだ』そうで.........


sibafunokuroko's website仰峰閑話second season
グリーンキーパーの野帳付録spin off



《前回を御覧でない方はこちらから............》
給水管の本管の継ぎ変え工事中 とっつあん哮っております............  「早く繋がねぇと ハウスの水が止まっちまうぞぉ」「判ってるってば(汗 」





『 う゛ぇ〜〜〜〜〜 』
「よく旧盆とか月遅れ盆とか云うけどさぁ、七月の二十三日前後に新盆をする地域ところなんかもあるんだよねぇ・・・・・・」




お茶を啜りながらsibakuroが言った。
それはどうも“百のコースに百のやり方 百のキーパーに百のやり方”と云う 件の祓詞sibakuro語録の一環の様でもあった。
で、sibakuroの話は相変わらず脈絡も取り止めもない、
「今年の秋はさぁ、日本芝には早めに肥料を振り始めた方がいいのかもなぁ。こう云う不順なお天気の年って、晩秋期の施肥のタイミングを図りづらいから、一回目十グラム、二回目十五グラム。三回目が二十五グラムで 合計五十グラムみたいな、食い過ぎない様に 無駄にならない様に、みたいなさぁ・・・・・・」
......って、言っている方の理屈はそれなりかも知れませんけどね。フェアウエイに化成肥料十グラムの施肥って、それを誰にやらせるつもりなんだか。
おまけに『ぶちにしたら補修撒布に行かせるぞ。ゼブラの縞の薄いところに化成を手撒きするんだ、ひゃっひゃっひゃっ・・・・・・』とか云いそうだしなぁ............





とまれ お盆の頃――――――――




漸くお天気も落ち着いて、俺達は 今度は刈り込みに追われることになった。
お天気が悪かった.........刈り込みが遅れたのはそれだけではなかった。
何せ 僅かな梅雨の合間を縫って俺達が精を出したのは グリーンの穴開けだったりしたこともその大きな原因だった。
謂わば キーパーsibakuroによる人災だった。
何だって ギャングでラフを刈ったらフェアウエイとの境が着かなくなっちゃった。部分的にはフェアウエイとラフが逆転しちゃった......なんてのは序の口だった。
そもそも伸びすぎたラフは一回じゃぁ刈りきれないわ、ギャングを引っ張るトラクターのタイヤに踏まれて寝てしまった芝は 後から三連の乗用ロータリーで起こしながら刈り直さなければならないわ.........
そうして ギャングがラフを走った後は ごろごろとロストボールが転がっていた.........だけでは済まなかった。ラフ刈りのギャングが芝の中に隠れていたロストボールを噛んだり そのまんま気がつかないで引き摺って鉄輪の後を遺してしまったとか、三連の乗用ロータリーが弾いたボールが 近くを走っていたフェアウエイモアのオペを直撃したとか、挙げ句の果ての段取りに『ラフのロストボール回収』なんて始末だったりもした。
そんな惨状であれば、お客さんから苦情の出ない筈もない。ハウスからの怨嗟の声の絶えないはずもない。それを、
「なぁに、この時期にラフ刈りが間に合っているようじゃぁ 来年の春先が思いやられちまうわなぁ・・・・・・」
コースうち親方キーパーは 例に依って へらへら笑ってやがった――――――――




「急がねぇと ハウスの水が・・・・・・」「だぁ〜からぁ とっつあん 判ってるってば(笑 」
「そう云えば 前に『日本芝の更新作業は 梅雨明け頃・・・・・・』なんて言ってましたけど、これからもう一回フェアウエイのスライシングとかするんですか?」
これは藪蛇かも知れないと 正直相当にビビりながら俺はsibakuroに聞いた。
聞いたってよりは 例によって みんなに聞かされた口ではあった。
『刈り込みの段取りが一回りしそうだから、次にsibakuroが繰り出すパンチってのは・・・・・・sibatamiさん聞いてきてよ・・・・・・』
・・・・・・来ると判っているパンチなら 少しは堪えられるじゃん、
ボクシング漫画の常套句を地で行く様な話しではある。
「コアリングやスライシング?日本芝の?・・・・・・やんないやんない。もうこの時期そんなもなぁ やるもんじゃぁ無い。本当は年に二回やりたいんだけどなぁ、引くべき時は引くことも考えないと。・・・・・・あのさ、こだわれるところ 子だわるべきところはいくらでもこだわって良いんだけど、そのこだわりが過ぎてとらわれになった時に失敗しくじりの芽を吹かせている事も忘れちゃぁいけねぇよ。もうお盆明けじゃん。朝晩の空気がヒンヤリし始めているから 日本芝は縦の成長から太る成長に切り替わる時期だろ。余計な仕事して余計なことに体力使わせるこたぁねぇだろ。もうこれからは日本芝は守りに入るぞ 守りに・・・・・・」
そう言ってsibakuroは 撒布の手配書を突き出して寄こした。
「?・・・・・・ラージパッチ*1の薬ですか?」
「とりあえず秋の一回目な。ここんち、、、、の辺りも 秋のラージの痕は来春まで引き摺りそうだから もう秋は 出さないに限るだろ」
「例年 除草剤の外注撒布の時に混ぜて貰っていたはずですけど・・・・・・」
「あのな、そもそもが ラージと除草剤のタイミングと合う事の方が少ないだろぉ。無理に除草剤に合わせればラージのタイミングを外して、強情にラージに合わせれば草だらけにしちまうんだ。ラージなんか予防撒布できっちり出さないで、補修撒布をしない様にするのが一番安上がり。下手放いて 補修補修って繰り返して余計な手間盗られた挙げ句に、気がついたら 本撒布なみに手間も薬代も掛かっちゃっていたなんて愚の骨頂だし、所詮除草剤は除草剤。いくら適用があったって、補修だ何だって回数と量を撒くだけ芝が傷むからね。タイミング合わないのを無理して一緒に撒くことはねぇんだ。綻びは無理の掛かったところから、だよ」
「・・・・・・って、相変わらず タンク数多いですよねぇ」
「あれ、前に言わなかった?業者がなんだかんだ云ったって ラージの防除は水量だから。水量多めできっちり撒かないと 残効が当てに出来ないんだよぉ〜」
尿素もこんなに入れるのね」
「へっへっへっ、撒布むらぶちにしたり 縞縞ゼブラにすると ゴルフ場でなくて 動物王国になっちゃうよ」
って、更新作業というパンチにばかり気を取られていたら、ものの美事にラージパッチの予防の撒布と云う ローキックを喰らった気分だった。
思わずそう愚痴ったsibatamiに、
禅宗の御坊に『心を何処に置かうぞ』って名言があるな。もっと本を読んで勉強おしよ」
sibakuro莞爾とにったり笑ってそう言った――――――――








2009.9月号 35.虫歯をつつけば君子のずるより 付録の三つ目。

ようやく 『勉強の話』になってきました(笑

『ラージパッチの防除は水量』と云うのはわたしsibakuroの持論ですが、最近の薬は小水量撒布対応だから......と よく薬屋さんに叱られます(笑

まぁ 与太話ですから、お見捨て下さい(苦笑










*1:日本芝の重要病害