35-1.『まぁ お天気なんかどこかで帳尻が合うものだから』だって....


sibafunokuroko's website仰峰閑話second season
グリーンキーパーの野帳付録spin off



「だから仕事してくださいよぉ」





『 何かよこせっ♪ 』
「こんなことしちゃって良いんですか?」
「こんなやり方聞いたことがないですよ」
「こんなことするの初めてだよ」




今度のキーパーsibafunokurokoが着任して以来 俺達が口にするのはそんな言葉ばかりだった。
まったくsibakuroの段取りと来たら 正しく奇想天外摩訶不思議奇妙奇天烈問答無用まったくなにがなんだかわからない●ラえもんみたいなものばかりだったからだ。
そんな俺達の素朴な疑問や 明かな動揺に、sibakuroはにったり笑ってこう云うのが常だった。
『いいかえ“百のコースに百のやり方 百のキーパーに百のやり方”って コースの仕事の祓詞はらへのことばがあるんだ。いつも頭の隅っこに置いとくと良いよ』
なんだし今度のキーパーsibafunokurokoは 事ある毎に 訳の判らない、まるで禅問答のような言葉を繰り出しては俺達を煙に巻いて悦に入っている妙な人だった――――――――




とまれ sibakuroの着任と同時、のっけ、、、からコース課コースの段取りは更新作業一色に染まった。


着任した日にホールカッターを持って一日いちんちバイクを転がして コースの中をふらふら遊び歩いていたと思ったら、いきなり機械屋に電話して それまで俺達が見たこともないような太くて長い十字タインを取り寄せた。
こんなもんでかれたら壊れちゃう・・・・・・
エアレーターに着けられたそれに 目の玉をひん剥いた俺達に、
『な、こう云うのって 男の願望だよな。“より太くより長くより硬く”ってな』
なんて莞爾とにったり笑って見せた。
さっそくその日のうちに最終組を追いかけてグリーンの穴開けが始まっていた。
ここんち、、、、のグリーンの宿痾は 十センチもうちょっとしたの耕盤層と、表層十五ミリくらいの黒いぐじぐじ、、、、の層だな。フェアウエイのレノベーターでコア抜いて 砂を充填して、バーチカルカッターで三十ミリくらい落としてダブルでなますにしてくれたら少しは気も晴れるかもしれないのになぁ」
何だって、いきなり何を言い出すのやら、
俺達が 新任のキーパーsibakuroに抱いた云い様の無い恐怖と不安と云うが、御覧の皆さんにお解り頂けるだろうか............




それからはもう年がら年中穴開けだった。
それも太かったり細かったり 深かったり浅かったり・・・・・・
毎回変わるその〔段取り〕に呆れる俺達に今度は、
『三浅一深とか 三柔一強とかなぁ、芝も女の子と一緒だな』
とか云っているんだよねぇ.........つくづく解らない人だ。




穴開けと言えば、着任と同時にティもアプローチもコアリングで穴だらけにしてしまっていた。フェアウエイは十何年かぶりに倉庫から引っ張り出され、機械の担当ゴコサンに他の仕事を全部止めさせた上に 休日返上で復活させたスライサーでずたずた、、、、に切り裂かれてしまった。
慌てふためく支配人やキャディマスターを、どうしてけむに撒いてみせたものやら知らん、
『日本芝の更新作業は 五月の連休前後と お盆前』
俺達の前ではそんな言葉を何回も口にしていた。
まぁ、そう云う 多少はまともそうなことなら まだ良かったんだが、そこはさすがに“芝生のカルトsibafunokuroko”、
『今年は六月から七月に閏月が挟まっているから 夏のお天気が分んねぇぞ』
......さっぱり要領の得ないことを口走りながら俺達に散散に発破をかけ続けた。
それが当たったのか たまたまかは知らないが、ティからグリーンまで 法面を除くスルーザグリーンに穴を開け スライシングをし、その終わりの無いかと思われた悪夢のような五月の段取りもようやくに先が見えかけた頃、ついでに云えば 俺達が昼休みに睡い目を擦りながら 肥料や薬剤の換算表を拵え続けていた頃。俺たちの体力と忍耐力の限界が訪れかけていた頃に、あとで気象庁が梅雨明けの宣言を撤回せざるを得ないような2009年の梅雨の走りが訪れていた............




「 何時までも遊んでいたら 神祟りを頂戴しますよぉ〜 」




さぁ、芝生コースで飯を喰う者にとって 悪夢のようなお天気の六月と七月がようやくに終わると、今度は嘘のように過酷な夏空が――――――――




何となく そんな風に思い描いていたsibatami八月なつは、いや 何ともぱっとしない夏に終わった。
上旬は七月同様の雨空が続き、ようやくに雨量計の線が平らになったのはお盆を目の前にした頃で、俺達はやっぱりグリーンの穴開けに精を出していた。
で、やっとフェアウエイも乾きだして タイヤの後に怯えながら芝刈をしなくても済むかと云う頃――――――――




相変わらずさくらと遊んでは ソファで爆睡して暮らしていたsibakuroが、むくり起き上がったのは そんなある日だった。
外は 快晴とまでは行かないが、晴天で蒸し暑かった。
「グリーンに水撒くぞ。もうすぐ大潮だべ」
やっぱりこの人sibakuroは“芝生のカルトsibafunokuroko”だよ............




sibakuroが釣りをするなんて聞いたこともないのだが、その机の上には 何時もネットで拾った その月の潮時表と月の朔望の一覧が置かれていた。
さくらと遊んでいない。寝てもいない。飯喰ったり ハウスに呼び出されてもいない、ゴルフマネジメントを読んでもいない ネットで何か調べてもいない時には、ほとんどその表を見ながら何か手控えている.........
そう云っても過言でないほどだった。
「まぁ 新月だから そんなに慌てなくっても良いんだろうけどさぁ・・・・・・」
本当にこの人sibakuroの云うとおりにやっていて 良いんだろうか........
些かならぬ不安に囚われたsibatamiだったが、
コースに散っていた若い衆わかいしが呼び集められて、sibakuroの段取りの説明が始まっていた――――――――








2009.9月号 35.虫歯をつつけば君子のずるより 付録の一つめ

“月齢と植物の吸水力の相関関係”については『ブラッドリー曲線』で検索すると面白いかも......です( 本当に“芝生のカルトsibafunokuroko”化していますですが(笑
 
まぁ“付録こちら”で、こう云うかたち、、、にすると ちょっとまともに書けないあれこれ、、、、が書けちゃうんで楽しい限り

御覧になった皆さんの 真贋の信疑の程は くれぐれも 是非にも是非にも皆様御自身の責任の範囲でどうぞ

ネットはあれ、、です。何時でもなにでも “虚実の皮膜虚構と現実の綱渡り”ですから.........(微笑