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ここで云うパッティンググリーンのエアレーションというのは、まぁ、”ムク刃”とか、”ソリッドタイン”などと云われる、棒状のタイン*1で芝地を突いて穴をあける作業のことをさします。
なんでここで、改めてそんなまどろっこしいことをいうかと云えば、それはやはり、この業界の旧態依然としたところ、とまでは云いませんが、作業の呼称などがまだ統一されていませんので、単にパッティンググリーンのエアレーションと云うだけでは、誤解を生ずるかも知れないから、なんですが。
もっとも、作業自体のバリエーションも多岐にわたり、新しい機械も次々に開発されている現状では、呼び方にこだわることよりも、目的をはっきりとさせておくことの方が大事なのかも知れません。
で、今回は、なんの話をしたいかというと、タインの話。
中空のタインを使うコアリング*2 と云うのは、こんな作業なんですが
【 コアリング風景 画面左側はコアを吸い取るスイーパーという機械 】
ムク刃で施工すると、穴があくだけで、コア *3が出ません。
この後を追いかけて、グリーンモア*4で刈り込むだけで一丁あがりですから、楽で早い。
【 エアレーション風景 】
ただね、早いのは有り難いんですが、いろいろと問題もありましてね。
穴が早く塞がってしまうとか。コアとして床土を拭き取らない分、穴の周囲は帰って締まってしまうとか、まぁ、色々云われています。
ですから、
ぜんたいどっちなんだ――――――――
と云えば、全てはケースバイケース。
状況を判断しての施工なんでしょうねぇ。
最近では、微生物資材や”ミネラル”を使って、サッチを分解して云々で、コアリングをしないでパッティンググリーンを管理する手法を採用されているコースさんの話もしばしば耳にします。
そう云う進んだコースさんでも、コアリングこそしませんが、それでも月に一回程度はムク刃でのエアレーションを行っているとか、そう云う話もあるくらいです。
まぁ、そんなこんなですから、
決して、コアリングの方がムク刃でのエアレーションよりも上等だ、などと云うことはないかと思いますし、ムク刃で回数を多く突けばいい、と云うものでもなさそうです。
「結局、駄目だったら抜けばいいんだよ」
なんて声もありますしね。
やはり全ては、やり方次第。
キーパーの経験や知識。感を総動員しての判断なんでしょうね。
本当はコアリングしたいけど、
なんてぇのは、sibakuro年がら年中、口にしているような気もします。
そう云うエアレーションは、ただの苦し紛れですので余りお勧めできないかとは思いますが――――――――
【 刃渡り210ミリ、太さ16ミリにまで成長した
さて、そのムク刃でのエアレーション。
棒状のタインを使用しますが、昔はその断面が丸い形、つまりは鋼材そのものの”○”い断面のものしかありませんでしたが、確か5・6年前に彗星の如く現れた某社の製品”スタータ●ン”。
これは、断面が十文字、本当に”+”の断面をしておりました。
曰く――――――――
施工した面が綺麗で、施工直後からプレーできる。
見かけの穴よりも施工された穴の表面積が大きい。
などなど。
sibakuro、一目見て飛びついちゃったね。
以後、ムク刃と云えば、”十字断面のタイン”しか使っていません。
十字断面の、ね・・・・・・、
なんで、”スター●イン”でないかと言えば、実はすぐに業界内外の各社が同様の”十字断面のタイン”を発売し始めてしまったんですね。
おまけに”より太く・より長く・より硬く”と云う、こちらの男性としての願望、もとい、ニーズに合わせて製品が改良され続け、それに呼応して”もっと太く・もっと長く・もっと硬く”と、こちらの要望はエスカレートし続け――――――――
かくて、本家本元の製品は、最近余り見かけなくなってしまいました。
一方で、後発品は改良に次ぐ改良、進化に次ぐ進化を遂げて、ついに、
全長300ミリ、刃渡り210ミリ、太さ16ミリ。
もはや、凶器といえる程までに成長した
ああぁ、昔は良いところ70ミリの刃渡りで太さだって12ミリくらいだったよなぁ・・・・・・
懐かしさとともに、裏切りの罪を犯した様な、云ってみれば自責の念に囚われていました、sibakuro。
俺って、真っ先に飛びついて、散々褒めちぎっておいて、新しいのが出たとたんに何のためらいもなくさっさと乗り換えちゃったんだよなぁ・・・・・・
正直に云いますと、「もっともっと」を云い続けた身でありながら、後発のタインを使うことに、実はひどい後ろめたさを感じて仕方がありません。
でも、いざ突いてやるとなると。やっぱり、太くて長いのを使いたい。
だって、ねぇ。男子一生の本懐として、ですね――――――――
【 ”十字断面のタイン”での施工後 】
さて、”十字断面のタイン”での施工については、パッティンググリーンの表面が上の写真のような状態になりまして、本当に+の字の跡が付きます。
初めて使うときには、進行方向に向けて+にするのか×にするのかで悩んだものです。
++++ ××××
++++ と ×××× の
++++ ××××
どちらにしようかと、散々悩んだ挙げ句、
どっちが良いのかなぁ。どっちがお勧めですかぁ
業者さんに電話をしましたが、
「好きにしてください」
呆れられたような記憶が――――――――
まぁ、とりあえず今のところは、
++++
++++
++++
がオーソドックスな、と云いますか、スタンダードと云いますかね。
製品によっては、その方向にしかセットできないようなものもあります。
で――――――――
こんな穴を空けるだけで、本当に芝生の活性が上がるのかという疑問の向きもあるかも知れませんが 、こんな写真は、如何でしょうか。
【 某ゴルフコースのパッティンググリーンとだけ云っておこう 】
これは、平成18年4月中旬に、16ミリの十字断面のタインで、200㎜くらいの深さで施工して、十日後の撮影。
明らかに穴をあけた痕から緑色が濃くなってきているのがお判りいただけるかと。
次にこれ、
それから五日後に、深さ20ミリでバーチカルカットを掛けたんですが、その際に、スイーパー*5で、掻き出した芝と床土を吸い取るわ、ブラシ掛けるわ、グルーマー回して刈り込みわ、って、そりゃぁ酷いいじめ方をしましたが、翌朝になればエアレーション痕はしっかり露が付いて健全さをアピ−ルしているという、ね。
――――――――まぁ、突いたところが低くなっているから、と云えばそれまでですが、ね。
こんな事からも、少なくとも何かしら穴をあけてあげれば芝の活性が上がることがある、と云うことがお判りいただけるかと思います。
【 適当な写真が見つかりませんが、エアレーションの痕に、根が差し掛けている様子。画面右下の
何だか、タインの話をしようと思ったら、エアレーションの話そのものになってしまいましたが――――――――
まぁ、いいかぁ。
結局、エアレーションという作業は、地べたに尖ったものを刺す作業ですが、そりゃぁ半端ではない回数と深さの貫入・引き抜き作業を繰り返しますので、新品で上の写真のような状態であったものが、ちょうど2ラウンド、25,000㎡の施工後は、下のような有様になります。
【 右端と右から三本目が、折れずに生き残ったもの。右から二本目は、折れて交換した直後のほぼ新品。二コース36ホール。三巡目に入って通算44面の施工で7本折りました。流石に刃の長さも形もばらばらになったので、泣く泣く交換の段取りに・・・・・・ 】
ちなみに、外して比べてみると、
【 刃が均一に減らないことについては、よく解らないので、今度メーカーさんに聞いてみましょう。多分、垂直に入っていないのだろうとは思いますが・・・・・・ 】
なんて塩梅です。
ちなみに、”十字断面のタイン”にも色々あります。
上の写真の、黒い色のタインは、また別の製品ですが、先端や本体の形状が微妙に違うのがお判りいただけるかと思います。
選択の基準――――――――
長さや太さ、耐久性なんかを考慮して、吟味するのは勿論ですが、
本音を云うと、あぁだこぅだと能書きを垂れておいて、案外最後の決め手は、一本あたりの単価だったりして・・・・・・